デジタル終活は、スマートフォンやパソコン、インターネット上に保管されているデータなどを生前に整理整頓しておくことです。これらを整理せずに亡くなると大きなトラブルにつながるケースもあり、デジタル終活は非常に重要な終活の1つです。
2020年下半期女性誌販売部数No.1の「ハルメク」が2021年に60~74歳の男女1008名を対象に「終活に関する意識調査」のWEBアンケートを行ったところ、「パソコン内やSNSなどのデータの整理・消去」を「終活」と見なす割合は24.9%で、「お墓の準備・用意」(21.1%)、「お葬式の準備」(20.6%)よりも「終活」として認識される割合が高いことが分かりました。また、必要だと思う終活に関しては、「生活面での利用サービスの情報整理」「インターネットやSNSなどデジタル関連の登録・加入サービスの情報整理」等、情報まわりの整理について「必要だと思う」割合が、前回調査から2.0ポイント以上増加しています。
【出典】 株式会社ハルメクホールディングス『60~74歳男女に聞いた「終活に関する意識調査」』詳しくはこちら
デジタル終活しておきたいもの
- パソコンのハードディスクのデータ、Googleクラウドなどのデータ、スマホのデータ
- ブログの記事、facebook,Instagram,X(旧 Twitter)などのSNSのアカウント
- 会員登録しているWEBサイト、特に課金されているサービス
- IDとパスワードの適正な保管、家族との共有も
- ネットバンキングやネット証券の口座
デジタルデータはどのように相続される?
デジタルデータの相続は、保存されているハードやデバイス、つまり機器自体を基準に考えます。PC内のデータを相続したと考えるのではなく、PCの現物を相続したと考えます。データはパソコンという遺品の内容物とみなされます。
実際のデータはクラウド上や運営会社のデバイス(機械)が保存しているため、デバイス自体は相続の対象にはならないのですが、データに対するアクセス権あるいはアカウントの権利などが相続の対象となります。
ただアクセスの権利については本人が亡くなると相続されないことになっています。なぜなら、本人がアクセスすることを想定されているため他の人に権利を移すことが適切ではない権利だからです。
デジタル遺言書の作成
デジタルデータを適切に相続するためには、まずデジタル遺言書を作成することが重要です。この文書には、デジタルアカウント、オンラインアクティビティ、デジタル資産に関する情報が含まれます。デジタル遺言書は信頼性のある場所に保存され、相続人がアクセスできるようにする必要があります。
デジタルアセット(資産として価値のあるデジタルデータ)のリスト作成
デジタルデータの相続においては、写真、動画、音楽、文書、オンラインアカウントなど、さまざまな形式のデジタルアセットが存在します。これらを整理し、リストアップしておくことが重要です。
パスワード管理
デジタルアカウントやデバイスへのアクセスは通常、パスワードで保護されています。相続人はこれらのパスワードを知る必要があります。安全な方法でパスワードを管理するか、信頼できるパスワードマネージャーを利用することが推奨されます。
デジタルデータの共有方法
ファイル共有サービスやクラウドストレージを活用して、デジタルデータを相続人と共有できるようにしておくことが役立ちます。一部のオンラインサービスは、アカウントの死後の取り扱いに関するオプションを提供していますので、これらを活用することも検討してください。
信頼できる代理人の指定
デジタルデータの相続においては、信頼できる代理人を指定することが重要です。この代理人は、遺族がアクセスできない情報にアクセスできる権限を持つことが期待されます。
これらのステップを踏むことで、デジタルデータの相続プロセスをよりスムーズに進めることができます。
ログインID、パスワードの保管方法
ほとんどの人はデジタルデータを家族間で共有せず、各々がデータを管理している状態です。しかし本人が亡くなった後、ブログ記事の存在やSNSのページが放置されていても誰にも気づかれないままです。また仮に知っていたとしてもIDとパスワードが分からなければログインして削除することはできません。
これは若い世代でも同じことです。人はいつどうなるのか分からないのです。そこで日頃から重要なデジタルデータをワードやエクセル、紙に書き出すなどの対策が必要です。
安全な場所に書き留める
パスワードやログインIDを書き留め、安全な場所に保管することができます。ただし、他人が容易にアクセスできる場所に置かないように気をつけてください。銀行の金庫箱や家庭内のセーフボックスなどが選択肢となります。
デジタルパスワードマネージャーの利用
安全なデジタルパスワードマネージャーを使用することも考えられます。これらのツールはマスターパスワードで保護され、複数のアカウントの情報を暗号化して保存します。代表的なパスワードマネージャにはLastPass、1Password、Dashlaneなどがあります。
信頼できる家族メンバーに伝える
パスワードやログインIDを信頼できる家族メンバーに伝えることも一つの方法です。しかし、この場合も注意が必要で、相手に安全な方法で伝えられるように工夫する必要があります。
デジタル遺言書の作成
デジタル遺言書にパスワードやログインIDを含めることも考慮できます。遺言書は信頼できる場所に保存し、相続人がアクセスできるように指定します。
法的なサービスの利用
一部の法的なサービスやオンラインプラットフォームでは、デジタル遺言やアカウントの取り扱いに関するサービスが提供されています。これらのサービスを利用することで、安全かつ適切な方法で情報を相続人に提供できます。
銀行口座の相続手続き
ネット銀行やネット証券などでは、預金や株式その他の金融資産のデータがネット上にあります。ログインパスワードがわからなくなると一大事です。大事な金融資産がネットに埋もれてしまうかもしれません。そうならないためにも生存中に整理しておくべきです。
ネット銀行口座の相続手続きは通常、以下のような手順になります。ただし、具体的な手続きは各ネット銀行によって異なる場合がありますので、具体的な銀行の規定やガイドラインを確認することが重要です。
死亡届を提出
銀行にはまず、亡くなったことを通知するための死亡届を提出する必要があります。通常、死亡届は役所や市区町村の窓口で提出します。
相続人証明書の取得
銀行が相続手続きを進めるためには、相続人であることを証明する書類が必要です。これには相続証明書や戸籍謄本が含まれます。これらの書類を取得してください。
銀行に相続手続きを依頼
銀行には相続手続きを進めるために、相続人であることを証明する書類を提出する必要があります。通常、相続人が口座の利用停止や残高の確認、振込手続きなどを行うことになります。
口座凍結や残高の確認
銀行は相続手続きの進行中に、口座を凍結することがあります。これは、相続手続きが進むまで口座が利用できない状態を指します。また、残高の確認や取引履歴の提供も行われます。
手続きの完了と遺産分割
銀行が相続手続きを完了すると、残された遺産が相続人に分割されます。相続人には、新しい口座が作られることもあります。
証券口座の相続手続き
証券口座には購入した株などを預けていますが、株はそのまま引き出すことはできません。故人の証券口座を引き継ぐには相続人が故人名義の証券口座で株を売買できないので、相続人名義の証券口座を開設し、その口座に故人の証券口座に預けられている株を移す必要があります。移管の手続きです。
その後、相続人は移管手続きにより取得した株を、自身の口座で保有するか、または売却して現金として出金することなります。
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